《マカベウスのユダ》の主題による12の変奏曲 ト長調 WoO45

3 21, 2020

ベートーヴェンは作品5のソナタを書いた1796年に、チェロとピアノのための変奏曲を3つ残しました。その中の一つが、ヘンデルのオラトリオ《マカベウスのユダ》の主題による12の変奏曲です。

ベートーヴェンはヘンデルをこよなく尊敬していた、という数々の証言が残っています。「この人の前ではひざまずくことさえできる。」と敬意を表していたと言われています。

このテーマは日本では表彰式に必ず流れる音楽として有名ですね。

この作品は彼を支援していたリヒノフスキー侯爵夫人のために書かれています。彼女は優れたピアニストだったと言われています。このころベートーヴェンが客演したベルリンのジングアカデミー(当時大変すばらしくて有名だった合唱)でヘンデルの作品が取り上げられており、そのときにこの作品を聴いてインスピレーションを受けたのかもしれません。残っている自筆譜が、清書のようなものだったため、実際もっと前に書いた可能性があり、1794年にこのヘンデルのオラトリオが伯爵邸で演奏されたときに書かれたのではという説もあります。

初め、ピアノが大部分リードしますが(第一変奏はピアノソロ)、徐々にチェロが大きな役目を受け持ち、対話に発展します。チェリストのデュポールの影響がここでもあり、チェロが3連符を弾き続ける技巧的な第7変奏は、デュポール作曲のエチュードに似ているところがあります。繊細なアダージョのあと、最後の変奏は3拍子で、すっかり4拍子のテーマから遠ざかり、ウィーンの舞踏の影響さえ感じます。ベートーヴェンならではの転調やユニークなアイディアに富んだ素晴らしい作品です。