モーツァルトのオペラ「魔笛」は、私も日本で小学校3年生のときに歌ったときから(担任の先生が好きな作品で、クラス全員で歌いました)大好きなオペラですが、ベートーヴェンはこの「魔笛」より2曲をテーマに、チェロとピアノの変奏曲を書いています。
今回演奏するのは「娘か女房か」の変奏曲です。鳥刺しのパパゲーノが可愛い女の子か奥さんがいたらどんなに幸せかと、夢見て歌うアリアですが、このテーマをベートーヴェンは実に色とりどりに変奏しています。
パパゲーノの純粋で楽しいキャラクターと、天のような美しい雰囲気両方を持ち合わせており、ピアノはアリアでも出てくるグロッケンシュピール(鉄琴の一種)のようになったり、細かく軽やかなフィギュアが舞ったりします。チェロがメロディを受け持つとピアノの半音階と一緒にはもったり、徐々に対話が盛んになってきます。二つの短調の変奏は悲劇的で、特に2つ目の短調の変奏、第11変奏はチェロのベースラインをメロディとして歌わせ、ピアノの和音は高めの音域で浮かせたあと、最後に半音階で繋ぐところがユニークです。ベートーヴェンならではの素晴らしいアイディアに富んでいます。最後の変奏は快活な3拍子で、ニ長調に寄り道した後、オペラの締めくくりのように華やかになったと思ったら・・・実は全部夢でした・・・のようにあっけなく終わってしまうところがベートーヴェンらしいユーモアなのかもしれません。